地平線まで続く丘陵地帯。
その中の一つの丘を登り切ったところでドキドキしながら大学の成績確認ページを開いた。
かじかむ指で更新ボタンを押す.....
『取得単位数、22単位』
学年を上がるために必要な単位数は32単位。
余裕の留年である。
ryuunen
りゅうねん・・・・・?
留年!?(||| ゚Д゚)
まじか!!
かなりの教科で単位を落としているとは分かっていたものの、まさかここまでとは....
ショックのあまりめまいがしてきた。
母上になんて伝えたらいいんだ...というか、なんでこんな時に自分はユーラシアの西の端で自転車をこいでいるんだ.....今すぐ日本に帰って教授に土下座して単位をくれるよう懇願するか....?
絶望感や悲壮感が頭の中でぐるぐるまわる。自転車をこぐのが辛くなり空き地に自転車を停め路肩に座り込んでしまう。
いや、しかし、正直なところ思い当たる節しかない
高校三年の冬に自転車旅にはまり、大学生になってから学業ほったらかしでひたすらバイトで働きそのお金で装備を整えた。夏には台湾に自転車を持ち込み、自転車とともに台湾を一周した。
バイトするか寝るか遊ぶかの三択しかない日々が長いこと続いていて、うすうす留年するんじゃないかという不安はあったが、その不安すらほったらかしにし続けた。
その結果の留年...ほんとうに情けない。
そして今回、ポルトガルをスタート地点にして6回国境を越えデンマークをゴール地点にする壮大な旅を計画した。
日本を意気揚々と出発したのは1週間前。
しかし、出発したばかりにも関わらず、一年目にして留年するような意志の軟弱な自分のことを考えると、日本を出た時の高揚感はみるみる萎んで、まるで路肩のガードレールになったかのように動けなくなっていった。
このまま自分は何もなさずに日本に帰るのか...
ぼんやりと自分が進むべき道を眺めた。
丘陵地帯を這うように続くこの道は、スペインのマドリードまで続いている。
スペインといえばフラメンコ。フラメンコといえばスペイン美女。というようなイメージしかスペインに対して持っていなかったので、スペインという国は当時の僕にとって美女がたくさんいるであろう魅力的な国だった。
.........とりあえず、スペイン美女を拝んでから留年のことは考えよう......
少し、動く気力がわいてきた。
気が付くと、すでに日が傾き始めている。急いで野宿できる場所を探さねば。
重い腰を上げてやっとの思いでペダルをこぎ始める。冷たい向かい風に顔がゆがむ。本当にヨーロッパの冬は寒い。この時期にヨーロッパを走るのは間違いだったかな。
だけど、いまは前に進むしかない。ずっとしゃがんでても凍え死んでしまう。
それに、きっとスペインには美女がたくさんいるはずだから....
(このときは、まさか二か月後、南に進みアフリカ大陸に上陸するとは思いもしなかった・・・)
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