中部国際空港に到着したのは、チェックインカウンターが閉まる一時間前だった。
本当だったらもっと早くに着きたかったが用事が立て込んでいたのでしょうがない。急いでラッピングマシーンで自転車を梱包しチェックインカウンターに向かう。
自転車は問題なくチェックを通り、少しの間同い年くらいの係員の方とこれから行くモンゴルについての話をした。自転車にテントを積んで旅をするんだと言うとすごく驚いていた。
「むかし、国語の教科書にモンゴルの草原を旅する話ありましたよね??」と聞かれた。うーん…あったっけ……
そんなの覚えてないけどあったような気がします、と答えた。出発前にそんな話が出来たのが素直に嬉しかった。
急いで搭乗口に向かうと搭乗終了までまだ時間があったので売店で深夜のフライトに備えてこれでもかと、4杯もカップヌードルを食べた。
しかし、たったの三時間のフライトにもかかわらずしっかり機内食が出た。フォークとナイフは機内食なのに金属製。さすがETIHAD航空!アラブの飛行機は違う!
白身魚のミルク煮込みは柚子がきいていて美味しい。全体的に日本テイスト。
ビールも飲めちゃう!
座席も機内サービスも機内食も最高だった。
今回利用したETIHAD航空はアラブ首長国連邦の国営航空会社で、スカイトラックス社が運営するワールドトラベルアワードで5年連続受賞している。実は、2年前ポルトガルのリスボンに行くときにも使っていて、その時も同じくらい感動した。乗り継ぎでベース空港のアブダビ空港で8時間ほどぶらぶらしたが、現代的であらゆるところにお金を惜しみなく使ってるように見えてUAEの底力というか、国力のようなものを肌で感じたのを覚えている。
この航空会社、意外にも定期的にセールをしていて安い時では、これだけサービスがいいのに片道4万でヨーロッパに行けてしまう。
たぶんまた使う。
機内ではうれしい出来事もあった。
搭乗し窓際の自分の指定席まで行くと先客がいて、おそらく一席分ずれているであろう老夫婦が座っていた。特にこだわりもなかったし老夫婦とチェンジし通路側へ。しばらくすると僕が持っているヘルメットに興味津々らしく向こうから話しかけてきた。英語は全く通じなかったが、今からモンゴルに行き自転車で旅をすることを伝わるかわからないが身振り手振りで伝えた。
空港で買ったお菓子をレジ袋に入れようとしていると、真ん中の席に座っていたおじいさんの方がおもむろに荷物入れを開けた。
なんだろうとみていると大きめの袋を取り出し僕に差し出してくれた。ささやかな親切ではあるが本当に思いがけないプレゼントに心が温かくなった。
3時間のフライトはあっという間だった。
飛行機を降り空港内の電車を使いイミグレへ。パスポートコントロールをくぐり無事入国した。この日は夜遅くだったので空港泊。横になれそうなベンチを探すが同じようなことを考える人はたくさんいて、もう既にベンチは埋まっていた。
床にマットを敷き横になる。しばらくして警備員に何か言われるが中国語オンリーなのでよくわからない。注意している感じではないのでたぶん心配してくれたのだろう。
マットの上で日記を書いていると、目の前のベンチで横になっていたお姉さんが身体を起こして、隣に座ってもいいよ、と言ってくれた。心遣いが嬉しかった。自分は床の上でも全然寝れるので感謝の気持ちだけ伝えた。
初めての国にはきっと誰もが身構えてしまうと思う。
それは言葉が通じない不安、あるいは知らないものへの警戒心なんだと思う。
僕も飛行機に乗ってから何かにつけて怪しんだりしていたが、それもまあ、しょうがないことなんだと思う。
だけど、疑うほど、袋をもらうとか席を譲ってもらうとか、そんな小さな親切であっても疑ったことがちょっと申し訳なくなって胸に引っかかってしまう。
これもまたしょうがないことなんだろうか。
そんなことを考えているといつの間にか寝てしまった。そんなに寒くない。